まだ知らない愛。

「おい聞いてんのか?」
「…うん」
「桜?」
名前を呼ばれて我に帰った私は翔が言った言葉と行動が気になり、上の空だったらしい。
「ご、ごめん。なんの話だっけ?」
「…どうした?」
「え、何もないよ?」
「…」
不審そうに見てくる瞬さんの視線から逃げるように寝転がる。空は少しだけ曇っているが夏というだけに気温は高い。
「おい、何隠してんだ?」
私の視界が空ではなく瞬さんの顔に一瞬で変わったことを理解するのに時間がかかった。
大の字になる私を覆いかぶさって上から見つめてくる漆黒の瞳。
「あの…みんないるんですけど」
「何隠してんだ?」
「別になにも…」
「…」
「…」
一瞬の沈黙はドスのきいた一言で終わる。
「家帰って話すか?」
「す、みません…」
「今夜、覚えとけよ」
「はい…え?」
こん、今夜?覚えとけよって…何を…
瞬さんの顔を見るとそこには意地悪に笑う瞬さんがいて、上から見下ろされる感じと甘い声に妖艶な雰囲気を醸し出している。
だって、そういうことだよね…!?
一気に赤くなる私を「可愛い」と言って笑っていた。