まだ知らない愛。

今日も昨日と同じく瞬さんと一緒にヤクザのお兄さんが運転する車で登校する。相変わらずの視線にまだ慣れるはずもない。
教室まで送って帰っていく瞬さんの姿を見えなくなるまで見ていたけど今日は綾芽さんの姿を見なかった。

「はよ」
席に着くと後ろから挨拶をしてきた男は綾芽さんの現彼氏…。
無視をしていると「無視かよ」と軽く笑っている。
この際全てを聞いてしまいたいけど瞬さんと綾芽さんのことまでこの男は知っているのか?
でも瞬さんは知っているような口ぶりだった。
関わるなと言われたけど…少しだけなら大丈夫だよね…。
「ねえ」
「ん?」
「あなたは綾芽さんの彼氏でしょ?」
「…」
「ねぇ」
振り返ると頬杖をついて私を見る視線と重なる。その顔には屋上ではかけていなかった眼鏡をかけている。眼鏡をかけると人はこんなにもイメージが変わるのか、パッと見、暗い奴かと思った。
「…翔」
「え?」
「あなたじゃねぇ。翔だ」
え…いきなり自己紹介をされても知ってるし。
外見は変わっても威圧的なオーラは醸し出されたままで、眼鏡の奥の瞳が私を捉える。
「綾芽は…俺の女じゃねぇ」
「え…?」
「俺の兄貴の女だ」
「は…?」
でも瞬さんが綾芽さんは真藤翔の女だと言った。
どういうこと?