まだ知らない愛。

考え出したら止まらない思いと聞きたくないのに聞いてしまう私は矛盾していて。
「呼び出されたんだ…綾芽に」

『綾芽に』
綾芽さんをそう呼ぶ瞬さんにも真藤翔がいながら瞬さんに馴れ馴れしくする綾芽さんにもだんだん腹が立ってきて私の視界は滲む。
「別にお前が心配するような事は何もねぇ」
ため息をついて言う瞬さんの手は私の手を離さないと言わんばかりに強く握り締められていた。

暴走は無事終わり、倉庫前でゆっくりと車が止まった。車を降りると倉庫内へと入っていく瞬さんの後ろ姿を見つめる。瞬さんの黒い特攻服に金色で縁どりされた「龍神十六代目総長」という文字。
そもそも、瞬さんは私のどこを好きになったのだろう?
こんな平凡で人を嫌う私より美人でこの上なく綺麗な綾芽さんの方が瞬さんに似合っている。
なのにどうして私なの?