まだ知らない愛。

なんとなく眠れない私はトイレに行こうと
一階に降りた。
リビングから漏れる光。
あれ?…お母さんまだ起きてるのかな?

少し開いたドアから突然聞こえた母の声。
今まで聞いたことない甘い声。
私の瞳に映る重なり合う二人。
私はまだ幼かったしその行為がどういうものなのか分からなかったけど
なんとなく、見てはいけないような気がした。

扉のドアノブから手を離して
部屋に帰ろうとした時一瞬だけ合った目。
知らない男が母を抱きながら私を見ていた。
母を見ていない。私を見ている。
気持ち悪い…
この感情をどう表現したらいいのかわからないくらい胸がざわつく。

背中に嫌な汗が流れて鳥肌が立った。
暴れる私の心臓。
体が大きく震える。
部屋に戻った私は布団の中で祈るように体を丸めて震えていた。