「さて、食べたいものはあるかな」
「うーん、まずは野菜食べたいかな。メインは宗広さんが決めていいよ」
「本当? 食べたいものがあったら言ってね」
飲み物が運ばれてきて、私達はグラスを掲げた。
「何に乾杯しましょうか?」
「この時間に」
グラスがぶつかる音が耳に響く。
「でも、撮影でばかり顔を合わせていたから、こうしてのんびりお食事するのも変な感じがする」
私の言葉に、宗広さんがそうだね、と笑う。
「葉山さんに見せてもらったけれど、本当に素晴らしいものばかりだったよ。君達に頼んで、大正解だった。僕の求めているものがそこにあったから」
真摯な表情で、宗広さんが言った。
例の写真集は今、編集の工程にあるらしい。出来上がるのはもう少し先で、世の中に出回るのが楽しみだった。
「タイトル、結局黒猫にしたって聞きました」
「うん、もう、それ以外に思いつかなかったんだ。散々そう呼んでいたしね」
「でも黒猫ってタイトルから、まさか建築家の作品集だとは誰も思いませんよ」
私が笑って突っ込むと、宗広さんも苦笑する。
「そうなんだ。事務所でもからかわれてる。でもこれほどぴったりなタイトルはないと思ったんだ」
本当に、出来上がりが楽しみだ。
「そういえば、うちのサイトのブログにも制作過程とか書いてるんだけど、ISAKIファンが結構のぞいてるみたいだよ」
「そんなのわかるんですか?」
私は目を丸くして訊ねた。


