「ありす、びっくりしてるね」
ピンクのふわふわのほっぺたの彼女を守るようにベビーカーに寄り添っているのは、少し冷たい印象を受ける表情を浮かべた小さな男の子だ。紫色の瞳にシルバーの髪は切りそろえられている。顔はどう見てもカノンさんそっくりなのに、纏う雰囲気が大違いだ。
それぞれ両親の髪と目の色をきれいに受け継いだ兄と妹は、リノ君とアリスちゃんというらしい。両親の見た目からして、将来は絶世の美男美女に育つに違いない。
「さあ、こんなところにいるのもなんですから、中に入りましょう」
宗広さんがそっと私の肩を押した。彼の、ラヴィンユを見つめる瞳はどこか誇らしげだ。
「中に入っちゃっていいんですか? 式を挙げているみたいですけど……」
カノンさんが不安そうに宗広さんを伺う。
「大丈夫ですよ、この式場は入口がいくつもあって、同じ時間帯に式を挙げるカップルがいても、かちあうことなく式を行えるような作りになってるんです。スタッフの調整がきけば、一度に3組のカップルが式を行えるんですよ」
「そんなに?」
私が驚いている隣で、夢乃が口を尖らせた。
「あー、もっと早くここのことを知っていれば、ここで式を挙げたのにーっ」
今にも地団太を踏みそうな夢乃だけれど、このラヴィンユが出来上がったのは2年前とのことだから、夢乃の結婚式にはまだ建築途中だ。


