「別に。返さなくて良い」 「で、でも…」 表情を変えずに言う翔真さん。 「風ちゃん!車椅子持って来たわ。翔真乗せてあげて」 「ん」 返事をした彼はまたもあたしを軽々と持ち上げ車椅子に乗せてくれた。 「あ、ありがとうございます」 「いいえ。お金と診察券と保険証はあるかな?」 「あ、あります」 「そう、あたしたちはもう行くわね。ついてあげれなくてごめんなさいね」 眉を顰める緑川さん。 「そんな!ここまで親切にしてくださって十分です。本当ありがとうございます」