遅刻するから、なんて言って家を出たけど、私は学校に来るのは早い方だ。

教室に入っても、だれもいない。


この空間が結構好き。
夕方と違って、学校全体の静かな空気を感じるから。

セミも鳴き始める前の夏の朝の涼しさが、
憂鬱だった私の気持ちを清々しくしてくれる。


――杉谷君だって、なにか理由があったのかもしれない。

そんな風に考えることができた。

ケータイも、アドレスも知らないんだもん。
杉谷君が言い訳したくたって、私たちの間に通信手段がないんだもん。

しょうがないじゃん!


そうやって、今朝までのネガティブな考えが、ポジティブな考えになると、自然と心が軽くなった気がした。