カイは山をでるまで
歩幅を合わせて歩いてくれた。



「舞花は歩くのが遅いな」


「これが普通だよ?」



「そうか。これだから人間はなぁ」



カイが怪しく笑うたびに
八重歯がちらつく。


空には澄みわたる
綺麗な星々が輝いていた。



「着いたぞ」


「ここは?」


「この道をまっすぐ行けばすぐにヨルの屋敷につくはずだ」



「本当?」



「あぁ、ここの道はめったに鬼は出ないから安心して帰れるぞ」



「分かった」



「俺は山に戻るとするか」



「あ!待って!」



「あ?」



「その…ここまで送ってくれて……ありがとう」



外はすっかり夜だった。


夜風がカイの髪をなびかせた。



カイは怪しく笑うと



「敵に感謝されるとはな。まぁ、悪くはないな」



そう言うや否や
山奥へと一瞬で消えて行った。




「カイ…本当にあんたは人間を殺す鬼なの?」





カイが、鬼が、
優しく感じてしまった。


そのせいか


思わずそうつぶやいている自分がいた…