私は1歩後ろへと下がった


私の想像と全く違った鬼の姿…


おとぎ話に出てくるような鬼は
どこにもいなくて

目の前には私たちと
何の姿も変わらない
カイという男の子がいるだけだった


ただカイが怪しく笑うたびに
背筋が凍りそうになる


怖いとかそんなのじゃなくて

なぜかゾッと凍りつくのだった


これが鬼の圧力ってやつ…?


「なぁー。ちょっとくらいそいつの顔見せてくれよー」


カイはじわじわと私たちに歩み寄った



「近寄るな」



ネオはカイを警戒していた



「っち、なんだよ。つまんねーの」


カイはふてくされて
近くにある草を蹴った


…なんだろ


人間と同じ姿のカイが人を殺す鬼

危ない存在だとは実感できない…


私はそう思えて仕方なかった。



「その考えが命取りになる」


ネオは横目で私を見ると
そう言ってきた



…心の声が聞こえたのだろう。



「分かってる」


私は冷静に答えると
ネオから目をそらした



「なんだお前らさっきからコソコソはなしやがって」


カイはつまらなさそうな顔をしていた

かと思うと

「お前らといても楽しくねーわ。町に行ってこよーかな」


そう言ってまた怪しく笑った



「町だと?」


ネオは町という言葉に食らいついた


「そうだ!町だ!まーち!」


カイはわざとらしく
ニコニコと笑いながらネオに答えた



「町には行くな!」



「やだね、町は俺ら鬼にとっては最高の場所だ」



カイは意地悪そうに言うと
すごいスピードで消えて行った



「待て!」



ネオはとっさにその姿を追って行く



「ちょっとネオ!待ってよ!」


私も追いかけようとしたが
あまりにも速くて一瞬で見失った



…薄暗い裏山にただ1人。


一気に不安が押し寄せてきた。


…どーしよう。


ここって鬼がでる
危険な場所なんでしょ?


鬼ってカイ以外にもいるはずだよね…



私は恐怖でその場から動けなかった



…本当にどうしよう。