「はぁ…はぁ」
口の端に付いた嘔吐物を袖で拭く。既に服には血肉が飛び散っていたので、気にならない。
(あんなのあんまりだよ、葉山が、辛過ぎる!)
千春は目を覆っていたが、音で大体の状況が把握できたため、いたたまれない。
舞台に立つ、百合香以外の人は震え、気持ち悪そうにしている。百合香は依然として俯き、表情が覗えない。
健太が嘔吐し、放心していたのはたったの数十秒間だった。膝を付いていたのだが、いきなり立ち上がり、
「アアアア゛ァ゛ァァ…!!」
絶叫して、今度は、強張った表情を浮かべる優香に矛先を向ける。それを避け、優香は舞台のギリギリの縁に立ち、金切り声で叫喚した。
「聞いてえぇ!!放送室にいるのは────」
大きく大きく口を開く。
しかし、その声は突如止んだ。
健太が驚愕に目を見開き、膝から崩れ落ちる。
優香の肢体が、舞台から落ちた。想像を超える衝撃に叫びながら。
「っあぁぁ゛!!」
優香が撃たれて殺された。
殺したのは槍を持つ健太ではなく、震える手で銃を持つ、かなえでもない、
────苛立った様子の百合香だった。


