「ちぃ…」
声を掛けるけど、反応しなかった。否、反応できなかった。
『シメイサレテモコワクナイ』
「指名されても怖くない」
陽菜以外の人が口を揃えて言う。
陽菜は離れた場所にいる光太を見た。
光太は…陽菜と同じようにキョロキョロしている。クラスメイトの異変に気付いたようだ。
大半の生徒が、精神的に大きなダメージを受け、生気が無くなり掛けている。陽菜自身も、倦怠感と、込み上げてくる吐き気に苛まれていた。
『コロサレルノモコワクナイ』
「殺されるのも怖くない」
隣の席の男子の顔を見ても、目に光が灯っていない。深海のように暗い、憂いが滲んでいる。
次、自分が指名されるかもしれない。そうしたら、羽村のように殺さない道を選ぶのか、あるいは目の前にいる余った人を殺して、生き延びるのか。
正しい取捨選択、などそこには存在しない。だから、終わらない螺旋階段のように、グルグルと思考が回るのだ。生と死という、重い苦しみを伴って。


