「待って…ぇ!」



 千春は膝を笑わせながら、叫んだ。



「千春ちゃん!」



 美琴が円な目を見開く。どこまでも透き通るような純粋な表情だった。



「なんで、千春、追いかけてきたの!?」



 亜梨沙が千春に背を向けて言った。


 亜梨沙の二つ結びしているおさげの髪がふわりと揺れる。体中が、恐怖で震えている。



「なんでって…、逃げたら殺されちゃうんだよ?分かってるの?」



 しかし、そんなこと暗黙の了解でふたりとも分かっている。つまり、彼女たちは自ら────。



「……いから」



 ボソッと亜梨沙が呟いた。それを聞いた美琴が、気まずそうに目を逸らす。






「も、死にたい…から」