ピンポンパンポン────



『至急、職員たちは職員室へ集まってください』




 陽菜たちが、帰りのホームルームを受けている時、唐突に校内放送が流れた。しゃがれた声は、校長のものであろう。


 そのクラスの担任は、何故か、額に脂汗を浮かべ、教室から駆け足で出て行った。



「どうしたんだろうね〜、陽菜」



 陽菜の後ろの席に座る、友人の藤沢千春が身を乗り出して話しかけてきた。千春の垂らした髪の毛が、頬に当たる。



「知らない〜。あ…、ちぃ昨日借りた本読み終わったよ!ありがとう!」


 千春とは、小学生の時からの付き合いで、陽菜は親しみを込めて“ちぃ”と呼んでいた。



「あ、この本どうだった?」


 千春に本を返すと、ワクワクしたように感想を尋ねてくる。



「んー、イマドキっぽくない、古風な感じが逆に良かったなぁ。それって映画化するんでしょ?あたし見に行こっかなぁ」


「だよね、私、特に金木犀の告白のシーン好き!映画、一緒に行こうよ!」


 千春は楽しそうに話す。千春は昔から読書が好きで、オススメがあれば陽菜にも貸してきたりする。

 陽菜自身も、千春に影響され、借りた本は大体楽しんで読んでいる。



 陽菜と千春は、それから、映画の日程や、今日出た課題のことなど他愛ない話をしていた。