─────
───



 人気のない、鬱蒼と木々が生い茂る雑木林。

 そこで、彼女は全てを失った。一切の希望を失った。


 覚束ない足取りで、血塗れになった体で、凄まじい生命力で、雑木林を彷徨ったのだ。



 ポタリポタリ。滴る血は、留めどなくて、草という草を黒々しく濡らす。




 そして、辿り着いたのは、集落外れの古びた一軒の木造住宅。そこには、老夫婦が住んでいた。


 夫婦に拾われた彼女は、自分の身をそこに潜ませ、長閑に暮らした。



 しかし、それはたった数カ月にしか満たなく、彼女の絶望は再び訪れる。



 老夫婦の、妻が亡くなったのが、転機だった。







 残された、老いた夫は─────。