先生と呼ばないで【完】



「本当は妻が隼人を引き取りとる予定でね。その時気づいたんだよ。私は仕事が忙しすぎて隼人との思い出がほとんどないと。最後に…父親らしいことをしてやりたいと思った。だからあの水族館に行ったんだ」


「マジ…か」



「しかしあいつの仕事が軌道に乗らなくてね。結局は私が引き取ることになった。でも…すごく安心したよ。あの水族館へ行った日に思ったんだ。お前は絶対失いたくないと…」


八神くんのお父さんはちゃんと八神くんのこと思ってくれている。


それが知れて私も心の底から嬉しくなった。


「あのイルカの絵を見るために、何度かあのBARへ足を運んだ。あれを見ると初心に戻れるような気がしてな」


そう言って目を細めた父親を見てドキッとした。


八神くんの優しい笑顔に似ている…


「お父様…卒業まであと少しです。どうか八神くんを学校に行かせてあげてくださいっ…」


私は深々と頭を下げた。


休学理由は私もよくわからない。


八神くんが納得したうえで休学したんだろうけど…


それでも、八神くんには高校最後の残り少ない学校生活を過ごしてほしいと思った。