「あれ?何か雨降ってきたぁ。」
カウンターで啓介くんと話し込んでた菜月は立ち上がって窓際に立つ。
もの思いにふけていたあたしも、その言葉に顔を上げた。
「本当だ。」
「梅雨、明けたんじゃなかった?」
カウンターの内側に居た啓介くんがビールを片手に窓を見る。
薫はダーツをした手を止めて
「確か、まだ明けてねぇよ。」
とウィスキーを飲んだ。
そして薫と視線がぶつかった。
「明日も雨だと。」
まるであたしだけに言ってるみたいにそう口にした薫は短くなった煙草を灰皿で消す。
あたしと桐生さんの関係を知ってるのは
この中で薫だけ。
何だか、見透かされてるような気持ちになってあたしは視線を逸した。

