『旅行に行こう。』
桐生さんにそう言われたのはつい3日前。
不倫、という関係を続けて約半年が経ち、今までホテルで抱き合う事しか許されなかったあたしたちにとって
桐生さんの言葉は
理解するまでに少し時間がかかった。
本当に?と尋ねると
彼が優しい声で
『あぁ。』と一言だけ呟いて、その言葉が聞き間違えじゃないとようやく頭の中に浸透する。
たった、一泊二日。
だけどあたしにはまるでそれが永遠のように感じた。
本来、奥さんと居る時間が、奥さんに向けられる瞳が
その日だけはあたしの時間に変わる。
罪悪感よりも
あたしの心は幸福感でいっぱいになって
電話越しに聞こえる桐生さんの声に
早く、会いたくなった。

