ノーチェ



……………



「えっ!?」

憎たらしい程爽やかな陽気に花屋に優しい光が降り注ぐ。

街行く人がすっかり半袖に衣替えした7月の風はもうすぐ夏本番を迎えようとしていた。



だけど、菜月の頭は春に逆戻り。

まるで少女のような笑顔で事の成り行きを話す彼女を、あたしは目を丸くして見つめる。



「だーかーらぁ、啓介くんと付き合う事にしたのっ!」

何回言わせるのよ、そう言って今し方仕入れたばかりの花々を店先に運んでゆく。



「ちょ、ちょっと待ってよ。何でそうなる訳?雅哉くんは?」

ポニーテールをなびかせる菜月を追い掛けて花を運びながら菜月に渡す。



「もちろん、別れたよ。」

「えぇっ!?だって、菜月…。」


あんなに、雅哉くんの事好きだったじゃない。

なのに、どうして?