ノーチェ



…百合子さんは薫の事が好き、なのかな。



そんなにわかな疑問が浮かび上がったと同時に薫が壁から離れ、グッと体を伸ばして言った。



「百合子はさ、俺の姉貴なんだ。」

「え?」


…お姉さん?



それはあたしの想像とは全く異なる話で
浮かび上がった疑問を風のようにさらっていく。



「って言っても、血は繋がってねぇんだけど。」

「…え?それって…。」


煙草をくわえてライターで火を付けた薫は
紫煙を吐いて続ける。



「百合子の母親は元々体が弱くて、あいつがまだ小さい時に死んだんだ。」


いつの間にか白み始めた空に朝日がこっそりと顔を出した。


「で、看護婦として勤めてたお袋と親父は再婚したんだよ。俺は所謂、連れ子ってやつ。」