ノーチェ




「そう言えば、百合子さんに連絡した?」


あれから触れていなかった百合子さんの話を薫に振る。

ちゃんと連絡したか、それを確認しようとしただけだったのだが、視線を向けると薫の表情が曇っているのがわかった。



………?


「…薫?」

聞いちゃ、いけなかったかな。
思いつつも、声を掛けたあたしに

「…したよ。この前、電話した。」

薫はバーの壁に寄り掛かって答えた。



「そう…。」

どこか胸のつっかえを感じながら、あたしは俯いた。


薫にとって、百合子さんはどうゆう存在なんだろう。

『お願いします。』


少なくとも、百合子さんは薫を気にしていると思う。

そうじゃなければ、わざわざあたしの所まで来てあんな真剣に、薫の居場所を聞いたりしないだろう。