ノーチェ




眉間にシワを寄せた菜月の言葉を遮ったのは薫だった。

「それならまた、今度やればいいじゃん。」

「そうだな。別に、その日じゃなくてもいいんだし。」


薫の意見に啓介くんも賛同して

「…ん~…、まぁみんながそう言うならいいけど…。」

と菜月もようやく納得してくれた。



そしてまた、菜月は啓介くんと話を始めて
あたしと薫もダーツの続きをする。



勝負はギリギリであたしが勝ち、薫は渋々ウォッカを一気した。



ゆっくりと流れているようで、本当は確実に流れてる時間。

すっかり酔いの回った菜月はカウンターにもたれるように寝てしまった。



「俺、上で寝かせて来ちゃうから。」

「あ、ごめんね。」


菜月を抱え、啓介くんは階段を上っていった。



窓の外に視線を移すと
薫が夜風を浴びながら煙草を吸っている。


あたしは薫を追い掛けるように、バーの扉を開けた。