ノーチェ



「それで、このバー貸し切りにしてお祝いしようって!」


さっきまで啓介くんと話してた菜月が急に会話に入り込んできた。


「まぁ、今も貸し切りみたいなもんだけどな。」

「おい、薫。どうゆう意味だよ。」

啓介くんの鋭い突っ込みにみんなが笑う。


だけどあたしは一人、その輪から外れて笑えずにいた。



『7月7日、誕生日だろう?』

桐生さんの笑顔が思い浮かぶ。



「…ごめん、あたしその日はちょっと…。」

用事がある、と語尾が濁ってしまった。


もちろん、みんなの気持ちは嬉しかった。

だけど―――…




「え~何で?どっか行くのぉ?」

菜月が立ち上がって駄々をこねる。


「…うん、ごめん。」

「でも、せっかく…、」

「しょうがねぇよ。」