ノーチェ



薫に百合子さんのメモを渡したあの日から
あたしはここのバーの常連になった。


ついでに菜月も連れて来たら、思いのほか気に入ってくれたので
仕事帰りはここに寄るのがもはや日課となりつつある。



この雰囲気とゆっくりとした時間の流れが
あたしのお気に入り。



ビールを流し込むと

「薫、ダーツ勝負しようよ。」

そう言って席を立ち上がるあたし。


「お、いい度胸じゃん。」

「負けたらウォッカ一気ね。」


望むところだ、と煙草に火をつけた薫はニヤリと笑った。



勝負は中盤になり
五分五分、といった感じのところで薫が口を開いた。


「お前、もうすぐ誕生日らしいじゃん。」

「え?あぁ、うん。」

トン、と的に刺さる音にあたしは俯く。