ノーチェ



……………


氷の割れる音と
流れるジャズが心地よく響く。

チリン、と既に聞き慣れた鈴の音と共に扉を開けると

「いらっしゃい。」

と啓介くんが顔を上げて笑った。



「あ~疲れた。ビールちょうだい。」

「はいよ。」

「あ、あたしもビール!」


パンプスを鳴らしてあたしに続き、菜月もカウンターに腰を掛ける。



「お前なぁ、また来いよとは言ったけど毎日来るなよ。」

「いーじゃん、別に。」


ダーツをしてた手を止めた薫はウィスキーおかわり、と言ってグラスを啓介くんに渡した。

そして、あたしの隣に座る。



「俺は毎日来てくれて助かるけど。」

にこやかに顔を綻ばせた啓介くんは
あたしと菜月の前にビールを置き、少し遅れて薫にウィスキーを渡す。