コーヒーをカップ半分程度飲み終えた所で
啓介さんはジャズをBGMで流す。
心地よい音楽と
温かいコーヒーが口どけに優しく感じた。
「…いい、お店ですね。」
とあたしが口を開く。
ニコリと笑った啓介さんは
「ここは元々カフェだったんだ。親父がたたむって言ってからは俺がバーとして経営してるだけどね。」
そう言って自分のカップをカウンターに置いた。
「そうなんですか。」
カップを両手で持ったままあたしは店全体を見渡す。
言われてみれば
カフェとして経営されてた名残が所々に感じた。
「まぁ、ゆっくりしてってよ。」
啓介さんは改めて淹れたコーヒーを手に
上へと続く階段を上って行ってしまった。
開店されていない静かな店に流れるジャズと共に
あたしと薫は二人きりになる。
何を話そうかと考えていたら空になったカップを置いた薫が話を始めた。

