ノーチェ




散々迷いに迷って、たどり着いた時にはガソリンは半分以上減っていた。


薫にガソリン代を請求したい気持ちになったけれど、ドライブをしたと想定して
それはやめよう、と決めて車から降りる。



曇り空を見上げて
そのまま視線をバーに向けた。


「居るかな…。」

そう呟いて
車のキーを掛けると
メモを手に歩き出す。


居なければ、それを百合子さんに伝えればいい。

そうすれば、もうあたしが彼らの掛け橋になる事はないだろう。




湿気の混じる、ベタつく風を追い越し
バーの扉に手を掛けた。


その時、

「おわっ!」、と突如扉が開いて、バーから出てきた人は驚いて目を丸くした。



「…ビックリしたぁ。」

それはこっちの台詞だ、と思いながらも
「すみません…。」と頭を下げる。