「N町3丁目!?」
オウム返ししてきた菜月は、何故か目を見開いて驚いていた。
「…何?菜月、あの家知ってるの?」
「知ってるも何も、N町の3丁目って言ったら塚本総合病院の医院長の家じゃん!」
掴み掛かる菜月の勢いに思わず手に持ったバケツを落としてしまった。
「塚本…総合病院…?」
今度はあたしがオウム返しをする。
「そうだよぉ!ほら、隣り町にある病院!」
菜月の言葉に
あたしはある病院を頭に思い浮かべた。
この地域に住む者なら
誰もが一度は行った事があるっていうくらい有名な病院だ。
「薫くんって、あそこの息子なんだぁ!すごいっ!超~お金持ちじゃない!」
と、まるで自分事のように喜ぶ菜月は
顔の前に手を組んで祈るように目を輝かせた。

