ノーチェ




嵐の後の静けさ、とは多分こうゆう時に言うのだろう。

彼女の去った花屋は
時計の音と、蛇口から時たま落ちる水音だけが響き渡った。




だけど嵐は彼女だけじゃない。


「莉伊!」

菜月も、だ。



「ちょっと、どうゆう事よぉ!あんたいつの間に薫くんと!?」

「違うって、そんなんじゃ…、」


むしろ、彼女より厄介かもしれない。

思わず溜め息が落ちる。


案の定、何を勘違いしたのか

「そっかぁ、莉伊ああゆうワイルドな人がタイプなんだっ!」

と一人で話を膨らませている始末。



「だから違うって。あの後、たまたま行った配達先が彼の家だったんだよ。」

バケツを持ち、店先に出ると中の水を捨てながら答えた。



「配達ってどこの?」

「N町の3丁目。そこの一番目立つ豪邸。」

バシャっと音と共に流れたバケツの水は
瞬く間に雨と一体化してゆく。