ノーチェ




「え~、」と肩を落とす菜月に配達リストを見せて言った。


「じゃあ菜月が配達行く?」

「……店番、します。」


唇を尖らせて
菜月は渋々レジを手摺に立ち上がった。


あたしは車のキーを手に取り出口へと向かう。




「じゃあ、お願いね。」

「はぁーい。」


ヒラヒラとやる気なく手を振る菜月に背を向けて外に出た。

そして店の裏にある駐車場から
配達する花束たちをトランクに並べてゆく。




花の香りに包まれた車内に乗り込むと
灰色の雲が窓の外に見えた。


「……やっぱ、雨降るのかな。」


なんて独り言をこぼし
ハンドルに体を預けて空を見上げる。



そして配達リストに目を通して、時間と場所を改めて確認すると

慣れた手付きで車を発信させた。