ノーチェ



「で、何となく感じたんだよな。」

街路樹のガードレールに腰を降ろした薫は
あたしを見上げてジャケットのポケットに手を入れた。



「あぁ、こいつ多分、俺と同じなんだ、って。」

……同じ。



それは、あたしも何度となく感じていた。


報われない恋に、救われない気持ちに
苦しんでたあたし達。


薫は百合子さんへ。

あたしは桐生さんへ。


届かない想い程
傷つく恋なんてない。

想いを口にする事。




それは、相手を苦しめるという事を
あたし達は知ってる。


だからこそ、想いを殺して

吐き出す場所も見つけられなくて。




だけど、いつしかその想いはあたしと薫と繋いでくれていた。



「なーんか、そう思ったら、ほっとけなかったんだよな。お前の事。」