ノーチェ



あれから一週間。

あたしは、薫と会っていない。



ほとんど毎日、と言っていい程薫と会っていたのに、あの日を堺にプツリと会わなくなった。

多分、薫は何かを感じとってるかもしれない。



だけど、どうしても会う気になれなかった。




「…何かあったの?」


薫くんと、と小さく付け足した菜月に

「別に何もないよ。」

そう言って外に視線を向ける。



開け放した扉から
チリン…、とどこからか風鈴の音が風と共に響いた。



「………本当に?」

風鈴よりも弱々しい、菜月の声。


わかってる。
菜月が心配してくれてる事。

だけど―――…





「本当に、何もないよ。何か最近疲れが溜まっててさ。夏バテかな。」

「………そう。」


だけど今は、何も言えないの。




…ごめんね、菜月。