ノーチェ




「暑いーっ!」

鈴の音と共に、菜月の声が店内に響いた。



「も~、今年暑すぎじゃない?」

パタパタと手で頼りない風を作る菜月の首筋に汗が光る。



「そお?毎年こんなんじゃない?」

言いながら菜月にタオルを渡した。



「あ~海行きたーい。」

「この前、啓介くんと行ってたじゃん。」

「でも夏の始めに行ったからまだ寒くてさぁ。」


扇風機にあたる菜月は振り返って髪を結び直す。

その左手の薬指に
キラリ、と太陽が反射して見せた。




「…啓介くんから?」


あたしの視線の先に気が付いた菜月は

「あぁ、これ?」

と、どこか嬉しそうに顔を綻ばせる。



「昨日、駄々こねて買ってもらったんだぁ!」

まるで、芸能人の記者会見でよく目にする
指輪を見せるポーズをとる菜月。