ノーチェ



まだちらほらと明かりのついているアパートであたしは慌てて薫の言葉を遮った。

不倫、なんて誰が耳にしても聞こえが悪い。


それとは裏腹に薫は慌てるあたしを見て、肩を揺らしながら笑った。


「もおっ!薫のアホ!」

捨て台詞を吐き捨てて
あたしは再び階段を上り始める。



「気にすんなよ。」

ふいに耳に届いた薫の言葉。



カツン、とパンプスの音を止める。

そのまま階段の踊り場で振り返ると
薫はまるで懺悔のように切なげに眉を下げた。



「お前の恋は、間違いなんかじゃねぇよ。」

それは、自分自身に問い掛けているようにも見えて。




「その気持ちが本物だって事、俺がわかってるから。」


赦されない恋をしてる自分に胸が痛くなった。