「送ってくれてありがとね。」
「おう。」
住宅街を抜けて
とあるアパートの前でバイクを停めた薫は
ヘルメットでぺたんこになった髪の毛を素早く立てる。
「じゃあ、おやすみ。」
「あぁ。」
月明りに照らされた薫の銀色のヘルメットを見届けて、あたしはアパートの階段を上がり始めた。
そしてちょうど中段目に差し掛かった時
「莉伊、」と呼び止められて、あたしは足を止めた。
手すりから覗き込むように階段下に居る薫に視線を落とす。
「うまくいってんのか?彼氏と。」
バイクに跨がった薫は太ももに置いたヘルメットに腕を掛けながらあたしを見上げた。
「…だから、彼氏じゃないってば。」
「あー…じゃあ不倫?」
「ちょっと!しーっっ!」

