「え?」

「高いものならいいけど」

「ううん、いいわ」

 一瞬その瞳に躊躇いの色が見えたが、幸子は意を決したように眉をきりりと吊り上げて指から銀色の指輪を外した。

 プラチナ製らしいやや重厚感のある厚めの造りになっている。

 中心にはめ込まれている小さな石はルビーだろうか。

「これで踏ん切りがつくし、むしろお願い」

 押しつけるように差し出した。

「そか、ありがと。ゆきちゃんとの記念にするよ」

「元彼からもらった指輪を?」

「ああ……。まあ俺には関係ないし」

 そう言って笑ったダグラスの笑顔が幸子にはとてもまぶしかった。

 やっぱり彼は天使かもしれない──