「ゆきちゃんはまず救急車で軽い手当と問診受けてきてね」

「あ、うん」

 白いワゴンに促され、そういえばあちこちすりむいているんだったと思い出す。

「逃げないよ」

 心配そうに振り返りながら遠ざかる幸子に応えてピックアップトラックの荷台に背中を預けた。

「助かったよ」

 私服警官から解放された青年に笑顔を向ける。

「大事ないか」

「俺もゆきちゃんも擦り傷と打ち身くらいかな」

 よく通る落ち着いた声に、やや見下ろして返した。

「まさか来てくれてるとは思わなかったよ」

「追っている組織が予想の規模より大きかったのでね」

 同じくベリルも荷台に背を預けて腕を組み静かに応える。