最凶の天使

 割と呑気な顔をして手を挙げているダグラスの隣で、幸子は身を縮こまらせ男たちを怯えた目で見つめていた。

 ひと通り青年から武器を奪ったのか、調べていた男が離れて目の前にいる眼光鋭い男がジロリとダグラスを見据える。

「データはどこだ」

「知らないよ」

 瞬時に男の平手が飛んで幸子はそれに短く叫びを上げた。

 ダグラスは痛みにやや眉を寄せたが、またすぐに笑みを浮かべる。

「その綺麗な顔に傷を付けられたいか」

「嫌だなぁ。みんな俺が顔を気にしてると思ってる」

 そりゃ師匠には一応は気にしておけって言われたけど。と付け加え、

「こんな仕事をしてて覚悟が無いとでも思うのかね」

 しれっと応えた青年に男は口の中で舌打ちして幸子に視線を移す。