最凶の天使

 よしんば掴めたとしても、細い草木だったりしてすぐにちぎれてしまう。

 笹などが体にぶつかり、その度に強い痛みに襲われた。

 しかしそれより、落ちていく恐怖に血の気が引いていく。

 滑っていく足の先は見えないが、徐々に道路に向かっているのは明らかだ。

 堅いアスファルトに落ちれば大怪我は免れない。

 もうだめだ──強く目を閉じた刹那、体が衝撃を受けて止まった。

「はあ」

 耳元の溜息にゆっくりまぶたを開く。

「あ、ありがとう」

 どうやらダグラスが止めてくれたらしく、力強い腕に恥ずかしさがこみ上げる。

 落ち着いて周囲を見回すと林が目の前にあり自分の周りには木々がなく、あと一歩のところでアスファルトに激突していたらしい。