「うん、大丈夫」

 怯えながらも応えた幸子にダグラスは柔らかな笑みを浮かべて頷いた。

「合図したら駐車場まで走って。絶対に止まっちゃだめだよ」

 ゴクリと生唾を飲み込んでゆっくりと頭を縦に振る。

 それを確認してダグラスは周囲の状況を把握するため、少し頭を上げた。

 その瞬間、相手のライトがこちらに向けられて幸子は思わず体を強ばらせた。

「きゃあああっ!?」

「ゆきちゃん!?」

 滑り落ちる幸子に手を伸ばしたが間に合わず視界から遠ざかる姿に舌打ちして追いかけた。

 うっかり足を滑らせてしまった自分に泣きたい。

 しかしそれよりもまず落ち続ける自分を止めなくては──必死に何かに掴もうとするが、その手は虚しく空を切る。