最凶の天使

「思ったより度胸あるね」

 良かった──つぶやいた言葉に幸子はハッとした。

 なんてことだろう、彼はあたしを怖がらせないように気を遣ってくれていたんだ。

 意地の悪い奴だとばかり思っていたのに、途端に凄くいい人に見えてきた。

 顔は文句なしにいいけど。

「思ってるより図太くて安心した」

 こいつブッ殺す──幸子は一瞬で殺意に転換しダグラスをこれでもかと睨みつけた。

 そうして緊張感のなか、二人は息を潜めて周囲の足音に耳を傾ける。

 ふざけているように見えてダグラスの目は鋭く、何も聞き逃さないという気迫が感じられた。