「なによ、相手が悪いんですからね」

 ぜんっぜん会いに来てくれないし、なんか冷たいし、高そうなレストランにはよく連れてってくれたけど──

 ぶちぶちと不満をぶちかましつつ、右手にある指輪に触れる。

「でも好きだったんだね」

「今はだいっ嫌いよ。なによ、あんなやつ」

 ぷいとご機嫌斜めに顔を背けた。

「とりあえず機嫌直してよ。ね」

「あ、うん」

 顔を近づけられて思わず返事をする。

 これだけ整った顔が数センチの距離にあると心臓がバクバクして落ち着かなくなる。