最凶の天使

「なによ」

 嬉しそうに笑っているダグラスに眉を寄せた。

「いや、ハイスクールのとき同じように訊いてきた友達を思い出した」

「なんて答えたの?」

「傭兵だったから俺を殺そうとした訳じゃないって」

 それはそうかもしれないけど、傭兵だったから殺す動機が出来たんじゃないのかな。

 幸子はそんな風に考えていた。

「全体で捉えるのは危険だ」

 その本質が見えなくなってしまう。

「本質……」

 どこか重みのある声に幸子は息を呑んだ。

「まあ、師匠が親父より凄い人だからっていうのもあったんだろうね」

 尊敬はしていたけど、憧れていたのは親父じゃない。