「大したことじゃないよ」

 何よ、さっきと言ってること違うじゃない。と心の中でツッコミを入れた。

 ダグラスは何から話そうかと言葉を整理しているようだ、思案するようにあごに手を当てて宙を見つめている。

「そんなに話しにくいことなの?」

「話しにくいというよりややこしいんだよ」

 何がそんなにややこしいのよ。幸子は顔をしかめた。

「その人に命を助けられたんでしょ? 事故か何か?」

「親父に殺されかけたんだよ」

 俺は、親父の本当の息子じゃなかったから──聞かされた言葉に幸子は唖然とした。