最凶の天使


「それで?」

 二百メートルほど進んで隠れ会話を戻した。

「え、まだ聞きたいの?」

「まだってまだ何も聞いてないんですけど」

「何が聞きたいの」

 明確な質問がないと答えようがないよ。

 当惑気味に発したダグラスに、それもそうかと考えた。

「その人とはどういう出会いなの?」

「普通、憧れてたから会いに行ったなんじゃないの」

 しれっとあしらわれて、それはそうだけどムカつく言い方ねと軽く睨みつけた。

「師匠のこと話すとプライベートな話になっちゃうから嫌なんだけど」

 会って間もない相手にそんな事を話すのは大抵、躊躇われるものだ。

 幸子もそれを言われてそうかもねと理解はした。