最凶の天使

「その師匠ってどんな人?」

 何の気なしに問いかけると、ダグラスはとても複雑な表情を見せた。

「聞いてどうすんの」

「聞きたいだけよ」

 彼女の言葉に呆れたように眉を上げ、暇だからまあいいけど……。と口を開いた。

「いい人だよ。いい人すぎて嫌われることもあるくらいにはね」

 面倒そうな顔をしながらも、その目には何かしらの感情が宿っているようにも幸子は思えた。

 師匠とは尊敬される人だ、その尊敬の念がやっぱり現れるものなんだろう。

「次いくよ」

「あ、あっ! ちょっと待って!」

 続きを待っていた幸子は、慌ててライトをつけてダグラスの背中を追いかけた。