山を下りるため、少しずつの距離でも足を進める。

 外灯のない山道で幸子は足を取られながら青年のあとを追いかける。

「待ってよ!」

 幸子は暗闇にうんざりしてダグラスを呼び止めた。

「こんなに暗くちゃ無理よ」

 ひと言にめいっぱいの不満をぶちまけると、ダグラスは小さく溜息を吐いてペンライトを差し出した。

「暗めのやつだけど無いよりはマシでしょ」

 何よ、あるんじゃない。

 幸子は半ば奪い取るように受け取るとスイッチを入れる。

「ホントに暗いわね」

 眉を寄せて薄ぼんやりと地面を照らすライトを見つめた。