「なに、いたらおかしいの?」

「別におかしくはないわよ。どんなことを教わるのかなってちょっと気になっただけ」

「師匠はマルチなタイプだから教わることはたくさんあったけどね」

 昔を懐かしむような眼差しに幸子は胸がキュンとなる。

 自分はこれほど惚れっぽい人間だったろうか。

「そこに蜘蛛いるよ」

 足下を差されて叫びかけた幸子の口を再び塞いだ。