「ご、ごめんなさい」

 危うかった自分に額の汗を拭い小さく礼を述べた。

 しかしすぐ、なんでそんなに反応が早かったのだろうかと疑問に感じてダグラスを見やると笑いを必死にこらえていた。

 こいつ蜘蛛がいるのを知ってて黙ってたんだわ。

 殴りたい気持ちを抑えつつギロリとにらみつけた。

「蜘蛛とか怖がるのって女も男も可愛いよねぇ」

「は?」

 なんだかジジ臭い事を言われて幸子は呆けた。

「師匠の影響で俺も平気になっちゃったからさ~、怖がる人が可愛く見えちゃうね」

「師匠?」

 ぼそりと聞こえた言葉に幸子は素早く反応する。