「とにかく──」

 ダグラスはそっと幸子の手を握り、彼女の目を見つめた。

「俺から離れたり、むやみに動いたりしちゃだめだよ」

「は、はいっ」

 潤んだ赤茶色の瞳に見下ろされ、幸子は早鐘を打つ心臓を精神力で抑えながら小さく返事をした。

 なんというか、成長した大人を感じさせつつも幼さを宿した可愛い笑みに口元が緩んで手が震えてしまう。

「でないと俺が面倒だから」

 爽やかな笑みに幸子は「ぶっ殺す」と心の中で叫んだ。